契約書の書式例とチェックポイント

このページでは契約書のチェックポイントと具体的な書式例をご紹介しております。 「契約書のチェックをしたいけど何をみていく必要があるのだろう・・・」
「契約書を作成する最に何を注意すればいいのだろう・・・」
「そもそも契約書ってどのような種類があるのだろう・・・」

 契約には様々な種類があり、当然それぞれの契約によって契約書のチェックポイントは異なります。契約にはどのような種類があるのか、ポイントがどこにあるのかを知っているか、知らないかでは、言うまでもなく大きな差を生んでしまいます。
 以下には、ビジネスの場でよく用いられる代表的な契約書です。秘密保持契約書については、書式例をあげています。ご参照ください。

(1)秘密保持契約書

 こちらは、従業員が退職する際に交わしたり、委託先との間で営業秘密などの秘密情報をやり取りする場合に、当該情報が第三者に漏洩することを防ぐために取り交わす契約書です。
 これには、情報に関する秘密保持の外に、再委託の原則禁止、作業場所の限定、作業担当者の限定と事前届け出、アクセス制限とアクセス記録の保存、事後時の責任分担、契約終了時の個人情報の返却・消去、損害保険によるリスクヘッジ等の条項を盛り込みます。

(2)金銭消費貸借契約書

 お金の貸し借りが行われ、その際に行なった取り決めの基本的事項や、弁済期が守られなかった場合の責任追及方法について定めた契約書です。

(3)売買契約書

 ものを「売りたい」、または「買いたい」というときに必要となってくる契約が、売買契約です。売買を継続的に行いたい場合には、最初に継続的取引契約が交わされる場合もありますが、これらは売買契約の派生型です。

 各書式例はごく一般的なビジネスシーンを想定して作成されています。
 これ以外の契約例について、または、契約書に盛り込みたいけれど記載方法が判らないなど、ご不明な点は、お気軽に弁護士ご相談ください。

(4)書式例

【書式例】

退職時における秘密保持契約書(案)

○○○○株式会社(以下、「甲」という)と○○○○(以下、「乙」という)は、乙が甲を退職するに際して、以下の内容の秘密保持契約を締結した。

第1条(秘密の保持)

 乙は、甲を退職後においても、甲の許可なくして第三者に対し、次の内容の情報(以下、「秘密情報」という)を開示・使用もしくは漏えいしないことを確認する。

(1) 乙が退職中に携わった次の業務により知り得た情報一切、ならびに甲が特に秘密保持対象として指定した情報
○○開発業務、××プロジェクト

(2)製品の開発、製造および販売における、企画、技術資料、製造原価、価格決定等の情報

(3)財務、人事等に関する情報

(4)関連子会社の情報または他社との業務提携に関する情報

(5)上司により部内秘密情報として指定された情報

(6)以上のほか、甲が特に秘密保持対象として指定した情報

第2条(情報の帰属)

 乙は、秘密情報が甲に帰属することを確認する。また、秘密情報に関し乙に帰属する一切の権利を甲に譲渡し、甲に対し当該秘密が乙に帰属している旨の主張を行わない。

第3条(競業禁止)

 乙は、第1項を遵守するため、甲の退職後○年間にわたり、次の行為を行わないことを約する。

(1)甲と競合関係に立つ事業者に就職し、または役員に就任すること
(2) 甲と競合関係に立つ事業者の提携先企業に就職し、または役員に就任すること
(3) 甲と競合関係に立つ事業を自ら開業または設立すること

第4条(損害賠償)

 本契約に違反して乙が秘密情報を開示もしくは漏えいした場合には、乙は甲に対して甲が被った損害の一切を賠償しなければならない。

第5条(協議事項)

 本契約書の解釈に疑義が生じ、または定めのない事由が生じたときは、甲乙誠意をもって協議しこれを解決する。

第6条(合意管轄)

 本契約に関して紛争が生じた場合、第一審の管轄裁判所を○○地方裁判所とすることに合意する。

 本契約成立を証するため、本書2通を作成し、甲および乙は各自記名捺印のうえ、各1通を保有する。

平成   年   月   日

甲:

乙:


【書式例】

業務委託契約書(案)

○○株式会社(以下、「甲」という)と○○株式会社(以下、「乙」という)とは、顧客データ処理加工の委託について、次のとおり契約した。

(目 的)
第1条 甲は、甲の保有する顧客情報のデータ処理加工(以下、本件業務という)を乙に委託し、乙はこれを受諾した。

(作業要領)
第 2 条 乙は、別添指図書に基づき本件業務をなし、納入期日までに顧客データを納入しなければならない。ただし、不可抗力または乙の都合により納入期日までに納入できないおそれがある場合は、すみやかに甲にその旨を通知する。
2 乙は、本件業務の作業場所および作業担当者を限定し、これらを甲に対して事前に届けなければならない。
3 乙は、納入期日の1週間以上前に顧客データを納入する場合は、事前に甲の承諾を得なければならない。

(検 収)
第 3 条 納入された顧客データの検査の結果、不良ないし不完全であることが判明した場合、甲は不良事由および処置等を記載した不良通知を、納入日から○日以内に乙に送付する。
2 乙は前項の通知を受け取った場合、ただちに甲の指示する処置を講じなければならない。

(委託手数料)
第 4 条 甲が乙に支払う委託手数料およびその支払方法は、甲乙協議の上、別途定めるものとする。

(秘密保持)
第 5 条 乙は、甲より提供を受けた顧客その他の個人情報(以下、個人情報という)を第三者に漏洩してはならない。
2 乙は、甲より提供を受けた個人情報を厳重に管理し、保持する義務を負う。
3 乙は、甲より提供を受けた個人情報について、本件業務のために必要最小限度の範囲の役職員に限りアクセスさせることができる。この場合、乙は、個人情報にアクセスした役職員に対し、乙と同様の守秘義務を負わせなければならない。
4 前項の場合、乙は、甲に対し事前に提供する役職員名、提供の目的、提供の必要性、提供する個人情報の範囲を記載した書面による申し出をなし、甲の書面による承諾を得なければならない。また、乙は、個人情報に対するアクセスを記録し、これを保持する義務を負う。

(複写・複製の禁止)
第 6 条 乙は、甲より提供を受けた個人情報について、複写・複製をしてはならない。ただし、甲の事前の書面による承諾を得た場合に限り、甲の承諾した数量のみ複写・複製することができる。

(目的外利用の禁止)
第 7 条 乙は、甲より提供を受けた個人情報について、本件業務の目的以外に利用してはならない。

(情報の返還・廃棄)
第 8 条 乙は、本契約期間満了時、もしくは期間満了前であっても、以後個人情報の提供を受け保持する必要がなくなったことを甲乙で確認した場合は、その日より○日以内に、甲より提供を受けた文書、または磁気ディスク等の一切の個人情報媒体物、甲の承諾を受けて乙が作成した複写物・複製物等を甲に返還、もしくは廃棄しなければならない。

(第三者への委託)
第 9 条 乙は、本件業務を、第三者に委託してはならない。
2 前項の規定にかかわらず、乙が本件業務のために必要がある場合で、かつ、甲が事前の書面によりこれを承諾した場合に限り、乙は、本件業務を、第三者(以下、再委託先という)に委託することができる。この場合、乙は、再委託先およびその役職員に対し、乙と同様の守秘義務を負わせなければならない。
3 再委託先についても、本契約に定めた乙の義務に関する規定を準用する。

(検査および報告)
第10 条 甲は、いつでも乙の本件業務の作業場所に立ち入り、個人情報の管理状況を検査することができる。また、それらに関し甲が乙に報告を求めたときは、乙は速やかに所要事項を報告しなければならない。

(損害賠償)
第11 条 本契約による情報提供期間内または期間後に、乙、乙の役職員、再委託先またはその役職員が個人情報を第三者に漏洩し、または不正使用した場合、乙はその責めに任じ、これにより甲または第三者に生じた一切の損害を賠償する。ただし、甲の責めに帰すべき事由によるときは、この限りでない。

(保 険)
第12 条 乙は、自らの費用と負担において、前項の責任を担保するために十分な損害賠償責任保険を付保し、甲をその共同被保険者としなければならない。

(有効期間)
第13 条 本契約の有効期間は、平成○○年○○月○○日から平成○○年○○月○○日までとする。

(協 議)
第14 条 本契約に定めのない事項、または解釈の疑義の生じた場合は、甲乙誠意をもって協議し、これを解決する。

(管轄裁判所)
第15 条 本契約に関して紛争が生じた場合、第一審の管轄裁判所を○○地方裁判所とすることに合意する。

 以上、本契約の成立を証するため本書2通を作成し、甲乙記名捺印の上、各1通を保有する。

平成  年  月  日

甲:

乙:

 これ以外の契約例について、または、契約書に盛り込みたいけれど記載方法が判らないなど、ご不明な点は、お気軽に弁護士ご相談ください。